シルクセリシンとフィブロインについて

はじめに

皆様は絹について、どんなイメージをお持ちですか?おそらく多くの方は衣類の絹のイメージがほとんどで、美容にも良いというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。絹は着用としても良し!美容としても良し!健康にも良し!と魅力がたくさんあります。絹の魅力について、ひも解いていく上で「セリシン」や「フィブロイン」とちょっと聞きなれない言葉が出てきます。「セリシンとは?」「フィブロインとは?」について語っていきたいと思います。

目次

    1.絹の構造

    昔から愛され続ける”絹”
    ”絹”には愛され続ける魅力がたくさんあります。天然繊維のコットンや、麻などもありますが、天然素材の中で絹は動物性たんぱく質でできており、とてもすぐれた特性を持っています。それは、絹が持つ独自の構造に秘密があります。
    絹糸の構造絹は、お蚕様が繭を作り、その繭から1本の長い長い繊維を取りだしたもの。お蚕様が吐き出した糸は、たんぱく質でできています。
    数百本の細いフィブリルという繊維の束がフィブロインであり、2本のフィブロインをセリシンが覆っています。1本の糸の中に、こんなにも細かなものがいくつも束になっているのが”絹”なのです。
    大きく分けて「セリシン」というたんぱく質と「フィブロイン」というたんぱく質で構成されていますが、それぞれ特性のちがうたんぱく質でできています。

    2.セリシンとは・セリシンの特徴

    「セリシン」とは、フィブロインを束ねるための糊のような役割でをしているのが、セリシンです。
    セリシンは今まで精錬工程(せいれん※繊維から混じり物を取り除く工程)において、熱湯で溶解され排水として流されていました。しかし、厳しい水仕事をしているにも関わらず、精錬している人たちの手が美しい原因が、セリシンの持つ保湿効果のためだということが、昨今の研究で明らかになり、注目を浴びている成分です。

    セリシンの機能特性について

    セリシンが抗酸化作用やチロシナーゼ阻害作用(メラニン色素合成阻害作用)を有することを見出し、セリシンが化粧品や繊維加工の分野において極めて重要な機能性素材であることを指摘してきた。さらに食品素材としての有用性についても検討を行ったところ、便秘改善作用や、大腸がんの発現抑制作用、ミネラル吸収作用などの興味ある新規機能性が明らかになってきた。

    広島大学 生物生産学部 教授 加藤範久 「セリシンの機能特性とその利用」より一部抜粋」

     

    セリシンの特徴

    ①保湿機能

    保湿お肌を乾燥から守るために必要な天然保湿因子。天然保湿因子とは、角質細胞の中にある天然の保湿成分(NMF)です。NMFは水の分子と非常に結合しやすく、結合した後は蒸発しにくくなります。保湿のために重要な天然保湿因子(NMF)に類似しているのが、セリシンです。セリシンを組成しているアミノ酸の中に”セリン”というものがありますが、この”セリン”が多く含まれていることで、保湿効果が高い理由です。天然保湿因子(NMF)と類似しているため、お肌への浸透性が良く、必要なところにピンポイントで吸収され、細胞を活性化してくれます。

    ②抗酸化作用

    老化現象お肌を若々しく保つために気をつけたいことは、活性酵素の働きを活発にしないことも大事になってきます。老化の原因でもある活性酸素を抑制する働きがあるビタミンとして、「ビタミンA」「ビタミンC」「ビタミンE」が良いとされていますが、セリシンはビタミンCと同等に活性酵素の抑制をする働きがあるとされています。セリシンの分子量が大きいほど抗酸化作用がみられます。

    ③紫外線吸収作用

    紫外線セリシンには、皮膚のメラニン色素をつくる酵素(チロシナーゼ)の活性化を抑制すると報告されています。絹糸の構造はフィブロインという2本の束を包むようにセリシンが外側で包み込んでいる形状なので、この中のフィブロインを守ろうという生理的機能からか、人体に一番害をもたらす紫外線値の時だけ、紫外線を通す力(透過率)が最も低くなることがわかっています。

    3.フィブロインとは・フィブロインの特徴

    私たちが衣類として利用している絹は、精錬することで水溶性であるセリシンが溶け出し、フィブロインのみが残ります。これを束ねて糸にし、生地にしたもので作られています。フィブロインは多孔質で空気や蒸気は通しやすいが、分子量の大きい水分は通さないので、通気性や透湿性に優れているが、防水の性質も持っているというのが特徴である。そのためインナー・下着や枕カバーなど肌に直接ふれる衣料品や寝具などに使用されることが多く、またその機能性の高さが持ち味ともいえる。

    フィブロインの特徴

    フィブロインの主な成分として、グリシン、アラニン、セリン、チロシンというアミノ酸が約90%占めています。ではそれぞれどういった役割があるのかを見てみましょう。

    ①グリシンの主な作用

    コラーゲンや天然保湿成分の生成に役立てられている他、神経の鎮静作用や睡眠の質を良くする作用・コレステロール値の抑制・免疫向上などの働きがあるとされ、健康補助食品としても多く使用されています。

    ②アラニンの主な作用

    アラニンもグリシンと同じでコラーゲンや天然保湿成分の生成・体内でエネルギーとして変換される作用もあり、エネルギーチャージなどにも使用される他、疲れにくい体づくりや、肝臓の働きのサポート、体脂肪を分解する作用もあるとされています。

    ③セリンの主な作用

    セリンは、必須アミノ酸で、情報伝達に必要な成分です。脳の働きに重要な成分であり、またお肌の保湿効果である天然保湿因子(NMF)の構成成分の一部で、美肌には欠かせない成分です。

    ④チロシンの主な作用

    チロシンは、神経伝達物質の原料となるドーパミンやアドレナリンなどの原料になり、甲状腺ホルモンや、メラニンの原料にもなります。

    フィブロインは人体との親和性が高い?

    フィブロインは厳密にいえば人体と同じ組成ではないが、人体になじみやすくまた、細胞が再生しやすいという特性があります。そのような特性を活かして医療素材として人工皮膚や手術の縫合用糸等に2,500年以上使われて来た歴史があります。精練されたフィブロイン糸にはアレルギー性もほぼ無く、生体安全性や生体親和性に優れているのが特徴です。

    この様にフィブロインは生体への安全性や親和性が高い事から、医療用素材や栄養補助食品・衣料品としても幅広く活用されています。

    またその特性を活かしてフィブロインを使った人工皮膚の研究が進められていて、その実現も遠くない未来に実現するかもしれないですね。

    まとめ

    古くから我々のお肌や人体への医療用などの素材として使用されてきたその歴史はシルクがいかに我々のお肌になじみ良く親和性の高い素材であるかが窺われます。

    またシルクの持つ特性にはまだまだ研究が及んでいない部分もあると思いますが、人の肌や髪のタンパク質と一番近い組成であること、またそれらを保護しようとする働きがある事、シルクが生きた繊維であると言われている事が何となくしっくりきますね。蚕を外敵から守ろうとするそのシルク自身の働きが私たちの肌や髪、体への良き影響になっている事は間違いなさそうです。

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